Librería Samer Atenea
Librería Aciertas (Toledo)
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Librería Perelló (Valencia)
Librería Elías (Asturias)
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Librería Kolima (Madrid)
Librería Proteo (Málaga)
逃げることは、恥だと思っていた。幼い頃、声を出せなかった一瞬の遅れが、取り返しのつかない後悔を残した。以来、「二度と逃げない」と誓って生きてきた。IT企業での仕事に行き詰まり、ぼったくりバーの罠に嵌められた夜、僕は走った。助けを求めても誰も応じない渋谷の雑踏を抜け、警察にすら見放され、それでも逃げた。その選択が、すべての始まりだった。職を失い、信頼していたパートナーに裏切られ、住む場所さえ失った。公園のベンチで夜を明かし、コンビニのおでんで飢えをしのぐ日々。それでも語学サービスの生徒たちへの約束だけは守り続けた。やがて手にした自転車一台を相棒に、世界へ向けて漕ぎ出す。ドイツで荷物を盗まれ、百キロを歩いた先で出会った老紳士。夢破れてキャンプ地に身を寄せる父子。夜逃げした入居者を追って雪の新潟へ向かった日。旅の果てに気づいたのは、逃げることは「負け」ではないということ。逃げた先にも人がいて、景色があり、救いがあるということ。そして、どんな状況でも「今の自分にできること」を差し出せば、それが誰かの人生を支える瞬間になるということ。逃げてもいい。逃げることで守られるものがある。逃げた先にしか見えない景色もある。これは、何度も転び、何度も立ち上がり、世界の広さと人の温かさを知った一人の青年の、再生と旅立ちの物語である。